ネットワーク理論

世界は「6人」でつながっている ー スモールワールド仮説と、人脈が驚くほど早く広がる理由

2026-09-18 公開執筆: 古谷幸治(株式会社プロジェクト・イノベーション 代表取締役CEO)

初対面の相手と話しているうちに、共通の知人が見つかって「世界は狭いですね」と盛り上がった経験は誰にでもあるだろう。この感覚は、実は科学的な裏付けを持つ現象である。

1929年、ハンガリーの作家フリジェシュ・カリンティが短編小説の中で、地球上の誰とでも数人の知人を介せばつながれるという着想を提示した。これを実証しようとしたのが、1967年に心理学者スタンレー・ミルグラムが行った有名な「スモールワールド実験」である。ネブラスカ州の住民に手紙を渡し、面識のあるボストンの人物を介してだけ手渡しさせ、最終的な受取人に届くまでの人数を数えたところ、平均して5〜6人を介すだけで手紙が到達した。ここから「6次の隔たり」という言葉が広まった。

この仮説は現代でも検証され続けている。物理学者ダンカン・ワッツとスティーブン・ストロガッツが1998年に発表したスモールワールド・ネットワークの数理モデルは、少数の「橋渡し役」となるつながりが存在するだけで、巨大なネットワーク全体の平均距離が劇的に縮まることを示した。2011年にはFacebookとミラノ大学の共同研究で、全世界のユーザー間の平均的な隔たりが3.57人にまで縮まっていたことも報告されている。デジタル化が進むほど、世界はさらに小さくなっているのである。

この事実が人脈づくりに示唆することは大きい。自分の「人脈」とは、直接つながっている数十人・数百人のことだけを指すのではない。その先につながる知人の知人まで含めれば、理論上はほぼ誰にでも数ステップで辿り着ける、指数関数的に広がるネットワークだということになる。

ただし誤解してはいけないのは、単に「何人を介すか」という段数だけの話ではないという点である。スモールワールドが成立するのは、クラスターとクラスターの間を橋渡しする、ごく少数の「ハブ」的な人物が存在するからだ。以前取り上げた「構造的空隙」を埋める人物こそが、まさにこのハブの役割を担っている。

つまり実務的には、闇雲に人脈の数を増やすことよりも、複数の異なる世界を股にかけている「ハブ」となる人と深くつながっておくことのほうが、遠く見える目的地への到達距離を大きく縮めてくれる。一人の優れたハブとの関係が、数百人分の人脈に匹敵する橋渡し力を持つことも珍しくない。

もう一つ見落とされがちな含意がある。世界が狭いということは、良い評判も悪い評判も、想像以上に早く、遠くまで伝わるということでもある。自分の知らないところで交わされた会話が、数人を介して思わぬ相手の耳に届くことは十分にあり得る。だからこそ、目の前の一人ひとりに対して誠実に向き合う姿勢が、回り回って自分の人脈全体の評価を左右する。

「あの人には到底辿り着けない」と諦める前に、2〜3通りの経路を具体的に思い描いてみるとよい。誰と誰を介せば、目的の相手に近づけるだろうか。案外、二人か三人の知人を思い浮かべるだけで、現実的な糸口が見えてくることが多い。

「世界は狭い」という感覚は、単なる偶然の驚きではなく、人脈を戦略的に使うための土台になる考え方である。到達できないと思っていた相手との距離は、自分が思っているよりずっと近い。

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