ネットワーク理論

「次数中心性」「媒介中心性」「近接中心性」ー 3つの中心性から、自分の人脈の位置を知る

2026-09-20 公開執筆: 古谷幸治(株式会社プロジェクト・イノベーション 代表取締役CEO)

「あの人は人脈が広い」と一言で言っても、その中身は一様ではない。社会ネットワーク分析という研究分野では、ネットワークの中で誰がどれだけ「中心」にいるかを測る指標として、性質の異なる複数の「中心性(centrality)」が使われている。社会学者リントン・フリーマンらが体系化したこれらの指標を知ると、自分の人脈が実際にはどういう強みを持っているのかを、感覚ではなく構造として捉え直せるようになる。

一つ目は「次数中心性」。単純に、直接つながっている相手の数である。名刺交換の枚数や、SNSのフォロワー数に近い、最もイメージしやすい「人脈の広さ」の指標がこれにあたる。知り合いが多いというのは確かに強みだが、この数字だけでは、その相手同士がどれだけ重なり合っているか、自分がどれだけ代替の利かない存在かまでは分からない。

二つ目は「媒介中心性」。ネットワークの中で、他の二者を結ぶ最短経路の上に、自分がどれだけ頻繁に位置しているかを測る指標である。これは以前このブログで紹介した「構造的空隙」の考え方と重なる。直接のつながりの数がさほど多くなくても、業界と業界、コミュニティとコミュニティの「間」に立っている人は、媒介中心性が高くなる。情報やチャンスが自分を経由しなければ届かない相手が多いほど、この値は上がる。

三つ目は「近接中心性」。ネットワーク全体を見たときに、自分から他の全員までの平均的な距離がどれだけ短いかを測る指標である。直接の知り合いが多くなくても、少ない経由で誰にでも辿り着ける位置にいる人は、近接中心性が高い。緊急に誰かへ情報を届けたいときや、業界の空気を素早く察知したいときに、この位置にいる人は強い。

重要なのは、この3つがしばしば一致しないという点である。次数中心性が高い、つまり知り合いが非常に多い人が、必ずしも媒介中心性が高いとは限らない。知り合いの多くが同じコミュニティの中で完結していれば、その人は「広いが橋渡しはしていない」ハブに過ぎない。逆に、知り合いの数はそれほど多くなくても、異なる複数の世界に足をかけている人は、次数は低くても媒介中心性は突出して高くなる。

ビジネスの現場でも、この違いは実感しやすい。社内外に顔が広く誰とでも打ち解ける「人気者」タイプと、部署や業界をまたいで案件を成立させる「仕掛け人」タイプは、しばしば別の人物である。前者は次数中心性が高く、後者は媒介中心性が高い。どちらが優れているという話ではなく、自分がどちらの強みを持っているかを理解した上で、人脈の使い方や磨き方を選ぶ必要がある。

自分の中心性のタイプを大まかに把握する方法はある。「知り合いの数は多いが、その知り合い同士も互いに知り合いであることが多い」なら次数型。「知り合いの数はそれほどでもないが、異なる業界・世代・立場の人と繋がっており、紹介が発生しやすい」なら媒介型。「誰かを探すとき、大抵2〜3人経由で辿り着ける」なら近接型に近い。

3つの中心性のうち、自分に足りない部分を意図的に補うという発想も有効である。次数型の人が媒介的な役割を増やしたいなら、これまで接点のなかった業界のコミュニティに一つだけ参加してみる。近接性を高めたいなら、各分野で「よく知られている」ハブ的な人物との接点を優先的に作る。人脈は量を積み上げるだけでなく、どの種類の中心性を伸ばすかという設計の問題でもある。

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