異業種交流会やカンファレンスの懇親会で、名刺を50枚、100枚と集めて満足げに帰る人がいる。しかし1ヶ月後にその名刺の束を見返しても、名前と顔が一致する相手はごくわずか、という経験をしたことがある人は多いはずだ。
これは意志の弱さの問題ではない。人間の記憶は、初対面の相手について「顔」「名前」「話した内容」という3つの情報を、時間が経つにつれて急速に失っていくようにできている。会場の熱気の中で交わした会話ほど、翌日には輪郭がぼやけてしまう。
交流会の目的を「名刺を集めること」だと捉えている限り、この問題は解決しない。本当の目的は、後から見返したときに「あの時こういう話をした、こういう人だった」と再現できる状態を作ることであるはずだ。
そのために有効なのが、名刺交換した直後、可能であればその場で、あるいは会場を出た直後に、相手についての簡単なメモを残す習慣である。所属や肩書きといった名刺に書かれている情報ではなく、「話した話題」「共通点」「次に何をするか約束したか」といった、名刺には載らない情報こそが後で効いてくる。
交流会での立ち振る舞いにも、記録を前提とした工夫の余地がある。一人と長時間話し込むよりも、要点を押さえた短い会話を複数人と交わし、その都度メモを取る方が、結果的に多くの「思い出せる関係」を作れる。深い会話は、その後の個別の場に取っておけばよい。
交流会で出会った相手全員と、その後も関係を続けようとするのは非現実的である。むしろその場では「もう一度会いたいと思えるかどうか」を見極めることに意識を向け、会った直後の熱量が残っているうちに、次のアクションを決めてしまうことの方が重要だ。
次のアクションとは、大げさなものである必要はない。「来週、オンラインで15分お話しませんか」「今度、〇〇のイベントで一緒になれたら」といった軽い一言を、その場か当日中に送るだけで、名刺交換という一度きりの接点が、継続する関係の入口に変わる。
交流会後のフォローメールを送るタイミングも重要である。当日か翌日中に送れば「たくさんの人の中から自分のことを覚えていてくれた」という印象を残せるが、1週間後になると、相手はすでにその日のことをほとんど忘れてしまっている。
交流会で得た名刺の多くは、実際には「弱い紐帯」の卵である。すぐに強い関係になるわけではないが、記録をきちんと残し、時々軽く接点を持ち続けることで、数年越しに思わぬ形で花開くことも少なくない。記録のひと手間が、この長期的な種まきを可能にする。
交流会に参加するたびに名刺だけが増えていき、誰が誰だか分からなくなっていく状態は、人脈が広がっているようで実は何も蓄積されていない状態である。出会いの「量」を追いかける前に、出会いを「記録し、思い出せる状態」に変える技術を身につけることの方が、長期的な人脈の質を左右する。
「人脈の森」の自動生成される人物サマリーは、名刺交換日・関係濃度・コンタクト履歴・タグから、その人がどんな人だったかを読める文章として自動的にまとめてくれる。交流会で出会った直後にメモを残しておけば、数ヶ月後でも「この人はどんな人だったか」を一瞬で思い出せる状態を保てる。