誰かに新しく接点を持ちたいとき、大きく分けて二つの方法がある。共通の知人を介して紹介してもらう「ウォームな接触」と、面識のない相手に直接連絡を取る「コールドな接触」である。この二つは、かけるべき労力も、期待できる成功率も、まったくの別物であるにもかかわらず、同じ「アプローチ」として一括りに語られがちである。
ウォームな接触は、紹介者の信用を土台として始まる。以前このブログで紹介した「共通の友人が持つ心理的効果」の通り、「〇〇さんの紹介です」という一言だけで、初対面の警戒心の多くは解かれる。返信率も、実際に会ってもらえる確率も、コールドな接触とは比較にならないほど高い。その代わり、紹介者に負担をかけるという固定費が発生する。誰にでも気軽に頼めるものではない。
一方でコールドな接触は、紹介者への負担がゼロである代わりに、相手に警戒され、返信すら得られない可能性が高い。しかし、ウォームな接触には決定的な限界がある。自分の人脈の中に、辿り着きたい相手への経路がそもそも存在しない場合は、コールドに頼るほかない。新しい業界に進出するときや、自分の人脈から何段階も離れた相手にアプローチするときは、コールドな接触が唯一の選択肢になることも多い。
問題は、この二つを無自覚に混同してしまうことである。ウォームな経路が使えるはずの相手に、わざわざコールドな一斉送信のような連絡を送ってしまう。逆に、コールドで当たるべき新規開拓に対して、無理にウォームな紹介を探そうとして時間を浪費してしまう。どちらも、機会の取りこぼしにつながる。
実務的な整理としては、まず「本当にウォームな経路が自分の人脈の中に存在するか」を確認することから始めるとよい。二次・三次の知人まで含めて経路を探し、見つかればできる限りウォームな紹介を依頼する。経路が存在しない、あるいは探すコストが見合わない場合にのみ、コールドな接触に切り替える。この順序を守るだけで、労力対効果は大きく改善する。
また、コールドな接触の質を上げる工夫もある。完全な赤の他人としてではなく、相手の発信内容や実績を事前にリサーチし、共通の関心事や文脈を一言添えるだけで、体感的な「温度」は変わる。完全なコールドと、完全なウォームの間には、実はいくつものグラデーションが存在している。
さらに、一度ウォームに始まった関係を放置すると、時間とともに「温度」は下がっていく。紹介を受けた直後は温かくても、その後の接触がなければ、数か月後には半ば見知らぬ相手同士に戻ってしまう。以前取り上げた「しばらく連絡していない人ほど資産になる」という視点とは矛盾しない。休眠した関係は資産に「戻せる」が、それには再接触という一手間が必要になる、ということである。
人脈の温度感を管理するというのは、誰に対しても等しく熱心にアプローチするということではない。今どの相手がウォームで、どの相手がコールドで、どの相手が冷めかけているのかを把握した上で、それぞれに見合った接触の仕方を選ぶという、いわば人脈の温度調整の技術である。
「人脈の森」のいつでも連絡できる心地よい関係タグは、「お互いに頼み事ができる仲」かどうかを明確なタグとして定義し、本当にウォームな関係だけを一覧で可視化する。誰に対してウォームな紹介を頼めるかを感覚に頼らず把握しておくことが、温度感マネジメントの第一歩になる。