心理学

人は150人までしか関係を維持できない ー「ダンバー数」から考える人脈の設計図

2026-09-18 公開執筆: 古谷幸治(株式会社プロジェクト・イノベーション 代表取締役CEO)

名刺交換したりSNSでつながったりした人の数は、数えようと思えばいくらでも増やしていくことができる。だが、その中で実際に「安定した関係」と呼べる相手は、果たして何人いるだろうか。

人類学者ロビン・ダンバーは、霊長類の脳の大きさと群れの規模の関係を調べる中で、人間が安定的に維持できる人間関係の数にはおよそ150人という上限があることを示した。これは「ダンバー数」と呼ばれ、狩猟採集社会の集落規模から、現代の会社組織や軍隊の編成単位まで、驚くほど繰り返し観察される数字である。

さらにダンバーは、この150人という数字が一枚岩ではなく、いくつかの同心円状の層に分かれることも示している。もっとも親密な5人ほどの「親友層」、次に15人ほどの「親密な友人層」、さらに50人ほどの「良い友人層」、そして150人の「知人層」というように、関係の濃淡に応じて維持できる人数は指数関数的に絞られていく。

この構造が示唆するのは、人脈を「広げれば広げるほど良い」という発想には、そもそも認知的な限界があるという事実である。SNSで数千人とつながっていても、それは知人層150人を大きく超えた、脳が実質的に管理しきれていない「名前だけのつながり」がほとんどを占めているにすぎない。

だからといって、150人を超えるつながりが無価値というわけではない。弱い紐帯の強さが示すように、疎遠な知り合いは新しい情報や機会をもたらす貴重な経路になる。問題は、それらすべてを「維持すべき関係」として同じ熱量で管理しようとしてしまうことにある。

ダンバー数から得られる実践的な示唆は、限られた150人という枠を、誰にどう配分するかを意識的に設計するという発想である。無自覚に増え続けるつながりに任せていると、気づけば同じ業界、同じ年代の似た人ばかりで枠が埋まってしまうことも少なくない。

具体的には、まず自分の親友層・親密な友人層・良い友人層それぞれに、今誰が入っているかを書き出してみることから始めるとよい。空白の多い層があれば、そこに意識的に人を招き入れる余地があるということであり、逆に一つの層に人が集中しすぎていれば、他の層への配分を見直すきっかけになる。

組織のマネジメントにおいても、ダンバー数はしばしば引用される。一つの部署やチームの人数が150人を超えると、互いの信頼だけに頼った非公式な調整が機能しなくなり、明文化されたルールや階層構造が必要になるとされる。人脈も同じで、枠を超えた関係は、記憶や感覚だけに頼らない仕組みでの管理が必要になってくる。

大切なのは、150人という数字そのものに固執することではなく、「自分が本当に維持できる関係の数には限りがある」という前提に立って、人脈への時間とエネルギーの配分を考え直すことである。すべての知人に均等な熱量を注ごうとする姿勢は、かえってどの関係も浅いままで終わらせてしまう。

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